おもしろいからやる子供

僕が中学のとき、学校の映画鑑賞で、Aくんが上映中、コショーを二階席から、一階席の学友にふりかけて、先生に見つかり、大目玉をくらったことがあるのです。当時、彼の母上はPTA役員もやっており、母上も役員、形無しというわけだったのです。
 Aくんはいつも、こういう偽悪的なことばかりしていました。技術部に在籍だったので、原付バイクを組み立て、公道で乗り回し、おまりさんに捕まったり、自転車を学校の近くの沼に分解して、沈めたり。暴力を振るったりする不良でもなんでもないAくんですが、
とにかく、「騒動」なることをやる。その度に先生にお目玉を食らう。わかっているが止められない。この心理を当時、まったく理解できなかった体育会単純男の僕でした。
 その謎を40年近い時間を経て、ダヴィンチコードのように解こうと先日、わざわざ、Aくんに電話で確かめたところ、「おもしろかったからやった」と何の曇りもない言葉で、のたまうのでした。そして、「いたずらの天才」という、しとうきねおさんの本の通り、真似したのだというのでした。
ハテナによりますと!しとうきねおさんは?

※漫画家

1936〜2005。早大漫画研究会にて、園山俊二福地泡介らと出会い、漫画家に。パロディー的な作風を得意とした。著書に「だじゃれ学校」「ひまつぶし哄笑読本」など。

共著を出した夏目房之介に影響を与えたことでも知られる。

また、1981〜1994、毎日中学生新聞の見開きの紙面で、毎週木曜日「パズラー学園」というコーナーを担当し、深夜番組的な名物コーナーとして人気を博し、700回以上連載された。

 
 Aくんの話を聞き、子供というものは、かくも単純に物事を逐行するものなのかと、新鮮な驚きがありました。自分がひねていたのか、そんなに単純に行動したことはなかった?と、自分では思っていましたので。
 極端な話、こんなキッカケで子供は相当、危険なことをしてしまう生き物なのだということを友人の浦島太郎のような答えで、理解できました。ちょっと危ない宗教や、危ない遊びも「おもしろいから入る、やる」ということが子供にはあるわけなのだと。
 そして、おもしろかったのが、このしとうきねおさんとともに共著で、その後、ベストセラー作家になった片岡義男さんが、テディ片岡というキャワイイ名前で、「意地悪な本」という本を書いていることを知りました。とても、その後、アメリカウエストコーストの匂いがする「スローなブギにしてくれ」のような本の著書とは思えない書き物。
 なんか、片岡さんもこんな時代があったのかと、親近感が沸いてきたビンボー臭い僕でした。