吉川圭三「たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場」

吉川圭三さんの「たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場」(小学館新書
)を読了。
 これは日本テレビ時代にたけしさん、さんまさん、所さんのため、日本テレビのため、自らために企画を書き、通して、彼らとがっぷり四つで仕事してきた記録である。
 まず、吉川さんがテレビの世界の常識をくつがえしているのは、「一部下が支えるのは一君主」という歴史的定説をあっさり、くつがえしているということだ。
 君主は部下に対して、自分だけを凝視し、命を捧げて欲しいのである。
 たけしさん、さんまさん、所さんはそれぞれ、テレビの世界では君主である。
 それが吉川さんという演出家兼プロデューサーはこの三人にそれぞれに、我が身を捧げることを誓った。偉大な君主とて「ただの人」である。脇見をされるのは嫌なものだし、嫉妬するし、部下を独占したいものだ。
 その掟破りが「吉川圭三」という男だけには許された。一体、何故だ。
 逆に「吉川圭三」が業界に君臨する破天荒なプロデューサーで偉大なるタレントたちを力でねじ伏せるプロデューサーなのか。答えはNOだ。長年、彼と付き合いがあるボクの印象だが、あくまでソフトな趣味のいい都会っ子である。
 過去のたくさんのテレビ業界の本を読み漁ってきたボクであるが、歴代ナンバーワンの面白いテレビ業界本であり、実録ものである。(実名もバンバン出てくる)
 クサい表現だが、吉川圭三だけが知るたけし、さんま、所の男の美学本である。
 そして、涙ぐましいスッタフたちの泥臭い物語の本である。
 「芥川賞直木賞文学賞メッタ斬り」の企画構成司会をやってきたボクとしてはこの本のエンターテイメント性には直木賞を与えてもいい価値があると思われる。
実録ものということでは「大宅壮一賞」も与えてもいいか。

  僕の企画構成の「ラジカントロプス2.0」(ラジオ日本)に吉川圭三さんが出演なさった時の
  音源はこちらで聴けます
  『吉川圭三のラジカントロプス2.0』(2013年8月5日OA 1時間35分38秒)

 http://blog.jorf.co.jp/radio/20_197/index.html