高倉健さんの待望の新連載

 DVDで「昭和残侠伝」(昭和40年)、再び鑑賞。浪人中に実はこの映画初めて見た。1973年だと思う。高田馬場の映画館だったか?
 僕は当時、19歳だったが、それまで やくざ映画というものが嫌いだった。嫌いな理由はその世界はなんとなく猥雑で恐かったからだ。
 少し、大人になっても、その猥雑感はまだ、あったが、恐いもの見たさの楽しみを大人になって体力もつき、見る事ができた。

 敗戦直後の浅草露店商街を舞台に、復員して新しいマーケットを開拓しようとする神津組の寺島清次(高倉健)は、それを妨害すべくいやがらせを始める新誠会に対して、ついに堪忍袋の緒が切れて、客人・風間重吉(池部良)とともに殴り込みをかけていく…。

  仇討ち!忠臣蔵の同じ美学だ。我慢、我慢して、ついに主人公の高倉健さんがキレる。
 お約束の復讐劇のやくざ映画なのだが、露天商が、屋根付きのマーケットに変化するという日本の戦後復帰という社会状況も描かれているのがおもしろい。
なんたって、高倉健さん率いる組は露天商の自主独立経営を提案する民主主義を唱えるから、当時の民権運動が映画に反映されている。特殊なやくざ映画である。
 冷静に見ると、健さんはもろ肌脱いだ上半身はまったく筋肉質ではない。今見ると、どうしてこんな華奢な体でケンカが強いのか?と疑問を持つ。当時は、この人はきっとケンカ慣れしているのだろうからと、自分自身を納得させながら見ていた。
 池部さんがこれまた、色男だ。映画「プラダを着た悪魔」のサイモン・ベイカーに似ている(笑)やくざ映画にバタ臭い顔が出て来て、違和感を感じるが。
 仇討ちに健さんと池部さんが向かうが、その時、二人に赤い色のスポットライトが彼らの移動と供に動く。ここだけが急に、劇場の芝居みたいな演出になる思い切った演出。
 さて、僕は高倉健さんの随筆が好きだ。新連載が、DCカードのダイレクトメール系雑誌で始まった。最初の11月号の「時の肖像 少年時代 父のカメラ 文 高倉健」。ひっそり、こういう雑誌で連載を始める所が、「よ!健さん 待ってました」だ