シューガーベイブは存在しなかったかもしれない

“青空に踊る” ★★
THE SKY'S THE LIMIT
(1943年アメリカ映画 RKO

監督:エドワード・H・グリフィス
脚本:フランク・フェントン、リン・ルート  
音楽:ジョニー・マーサー、ハロルド・アーレン、リー・ハーライン
主演:フレッド・アステア、ジョーン・レスリーロバート・ライアン
 
 1943年制作の映画ですから、太平洋戦争の最中の映画なのです。アステアが演じたのは零戦を17機撃墜した英雄ということで、10日間の凱旋休暇を貰った空軍パイロット・アドウェル少尉。
 正直、ストーリーもつまらないし、ダンスも特筆すべきものはありません。
 しかし、1943年の戦争の最中にこんな能天気な映画を作れるアメリカの余裕です。
 もっとも、ディズニー映画「ダンボ」は1941年の作品です。スピルバーグの「1941」にアメリカの将軍が戦時中なのに「ダンボ」を映画館で見て、泣いているシーンには笑いながらショックを受けました
 日本は当時、一億火の玉という決死の覚悟で戦っていました。当時のアメリカの映画産業を眺めてみると、まるで、戦争の勝利を確信しているようだ。
 山下達郎さん率いるシュガーベイブのメンバーの大貫妙子さん。
雑誌「考える人」の大貫さんの連載を読んでいたら、大貫妙子さんのお父様は
知覧の特攻隊の生き残りであることがわかりました。
 もし、お父さんが亡くなっていたら、大貫さんは誕生しなかったのだから、あのシュガーベイブは誕生しなかった。自ずと、達郎さんも大貫さんも、日本の音楽界で活躍していなかったわけです。
 大貫さんのお父さんが死ぬ覚悟で、戦中、アメリカと対峙し、戦後、その娘さんはアメリカ音楽の洗礼を一身に浴び、日本の音楽界をPOPにしていくことに大きく貢献していく。
 歴史の偶然を感じざるおえない。