「朝まで待てない」という作詞の時代性

[鈴木ヒロミツさんが亡くなった。早すぎる。
彼がリードボーカルモップスの大ヒットデビュー曲「朝まで待てない」は僕の長年お世話になった事務所の先輩の阿玖悠さんの作詞であり、日本で一番先に好きになったポップ系の作曲家村井邦彦さんの作曲である。
 「朝まで待てない」はサイケデリックサウンド
LSDとかの幻想の世界(やったことないですが)、ジェファーソンエアプレインの世界を上手に模した曲だった。
 当時のベトナム戦争の空気をいっぱい吸って産まれた曲。
鈴木ヒロミツさん達って、風体がハードなヒッピー風で、かなり、怖かった。
鈴木さんはシャウトし、これがなかなかのドスの聞いたいい声なのだ。

 「朝まで待てない」という曲のタイトル通り、当時、阿玖悠さんは動詞形、命令形のタイトルで、名詞を拒んでいたという。
それが彼が感じた時代の空気だった。

 「少女は涙を流し半分眠っていた。半分の眠りの中に生きている世界があった」
モップスのデビューアルバムの解説文に書いた阿玖さんの文だ。

作詞家が作詞屋ではない時代を証明する見事な一文だ。
川内康範さん、そして、阿玖悠さんへとその精神は受け継がれている。
自分が書いた一遍の詞に川内さんがムキになるのも、わからないでもない。
プロの作詞家がまだ、詩人に近かった時代だ。
詞を骨肉を削って書いていた時代。
そんな詩人の肉体を持った作詞家の時代は僕は作詞家松本隆さんで、再び、山を描き、ピリオドを打った気がする。