<我が愛しき松本清張>
中間小説のような上巻は肩透かしのスタートだったが、下巻から
捲し立ててくる。
戦中、実際にスイスでアメリカのアレンダレスを仲介役として、何人もの日本の軍人、外交官が和平工作が加担し、結局、TOKYOの理解がなく、潰えた事件をヒントにし、書かれた小説。
小説の中で、スイスに駐在していた野上顕一郎一等書記官はその地の病院で病死。残された妻と幼い娘。野上顕一郎は実は生きていた。戦後、何年か経ち、野上は身を隠しながら、来日。国籍は死んでいるので日本ではない。
一目、娘のそばに近づきたい。
最後に野上は娘の久美子の前に現れる。
大人になった久美子はそれが自分の父だとは気づいていない。
最後に二人で童謡「からすなぜ なくの」を歌う。
それは幼い頃の久美子が母と一緒に父に歌っていた童謡であった。