勝手に師と仰いでいる脚本家橋本忍さん

 去年は「草野☆キッド」のロケでいち早く、なんとか喫茶にも行って、アキバはなんどか行ってるが、電脳カーボーイのシン石丸さんに教えていただき、秋月電子などが点在する秋葉原のコアな電気部品横丁に初めて潜入。こういう場所に来てる男子たちは決して、ヤンキー風吹かさなくても、男の子濃度が90%の高い気がする。男の子=プラモ好き=家電分解好きってあるでしょ、「男の子の伝統」(笑)に。
 その後、神保町の古本屋廻り、一請堂書店にて物色。ここの店員さんほど、きちんと在庫の本関して把握している店はない。中年男子店員は誰でも何を聞いても答えられる。ここの教育の行き届き方は脱帽。みんなファッションが地味で、店だけでなく店員さんも昭和30年代している。
 待望の書「複眼の映像」(橋本忍)を手に入れ、歩き読み、これは面白すぎる。
 野村芳太郎監督の松本清張ものの大ファンの僕。当時、橋本プロが製作にあたっていて、「砂の器」のロケには脚本の橋本忍さんがカメラの後ろに立っている姿の写真も残っている。カメラマンはもちろん、川又昇さん。
 砂の器の例の親子の旅の長いシーンは松本清張の本にはない。橋本さんが想像したもの。日本全国、竜飛岬、北海道、四国と四季折々の季節
を旅する。「宿命」の音楽が全編を彩る。作曲は菅野光亮さん。多くの人は芥川也寸志さんの作曲と勘違いしているが、実際は菅野光亮さんの作品。ヒッチコックの「めまい」のバーナードハーマンの作曲法やラフマニノフに多大な影響を受けている思われるが、中に和声のメロディが入り込み、絶妙な作曲となっている。菅野光亮さんは若くして亡くなられて、これが出世作。長髪のロックをやっている息子さんがDVD特典映像で淡々と父を語っているのが楽しい。
 松竹城戸社長に一旦、断られたが、構想17年の橋本忍さんと野村芳太郎さんの執念の作品。緒方謙さん、加藤芳さん、本当にうまい役者が固めている。超深刻な映画に映画館主の渥美清さんがポッと出てくる。ホッとする。これは山田洋次監督の「拝啓天皇陛下様」に藤山寛美さんが登場するシーンのホッと感もそうだった。一流の喜劇人が深刻な映画の張り詰めた空気の空気抜きをしてくれる。山椒がピリリと辛い効果だ。若手刑事が森田健作さんがやったことは正解。天真爛漫な明るさのイメージだった森田さんがこの映画をリラックスしてみさせてくれる。
 一番好きなシーンは丹波哲郎さんの捜査会議での説明シーン。あの音楽と旅のシーンが荒縄の紐のようにそのシーンに巻き込まれていく。
 この丹波さんは男が惚れる。上司になって欲しい俳優ランキングがあるなら、この時の丹波さんしかいない。その大物感は007にも出たハリウッド俳優丹波さんならでは。「音羽や!」と掛け声をかけたくたくなる
丹波さんの説明シーンだ!
 主役加藤剛さんは果たして、正解だったのか?疑問が残る。この人が出てくるとあの日本人離れした顔がロシア文藝映画のように見えて?果たして、日本的な映画にふさわしいのか?それと、ピアノを弾いているシーンで差し替えの実際弾いている手がふんわりした肉付きの手で、なんか笑ってしまう。これも緊張の緩和か?(笑)ピアニスト中村紘子さんの手のなのか?以前、テレビで彼女の手を見てとても丸っこいのに驚いたことがあった。それと島田洋子さんはまだ若かったし、ホステスの役というのもお嬢様のイメージがあったので違和感があった。でも、この辺はヒットするための売れ筋俳優キャスティングなどの事情があったのかも。
 長くなったが、その「砂の器」の脚本家橋本忍さんの本を入手しご機嫌な僕はスキップしたい気分。橋本忍さんの分厚い脚本シリーズもあったが、高価だったので次回。