本の水増し申告

よく文化人にどのくらいご本を所蔵しているんですか?
という質問に一万冊くらいかな?とか大雑把に、大概は多めに水増しで申告する人が多い。
 いまだに、たくさん本を読んでいる人は偉いという子供の頃に植え付けられた概念で生きているのか?たくさん読んでいる人は世の中の人に賢く思われると思っているのか?(確かにある程度たくさん読まないといけないこともある。研究や調査などの仕事は当然そうだ)
 なんだか、強い奴の喧嘩を傍観しただけで本人は一度も喧嘩したことがないのに、見た目がヤンキー系タレントがありもしない武勇伝を捏造する輩と一緒である。
 同じように「オレってオタクなんですよ」という人もいる。
 オタって、他人からオタって、陰口で言われて、ナンボのもの。
 自分で「オレってオタクなんですよ」という輩も最近、やたら増えている
 オタクが市民権を得て来て、ステイタスさえ感じている輩がいるのだろう。
 今回、書評家の吉田豪さん宅に本棚ガサ入れというラジカントロプス2.0(ラジオ日本)の企画を僕が考えて、収録してきた。(これからシリーズでやっていく企画。次はジャーナリストの佐々木俊尚さんの本棚ガサ入れの承諾をすでに取った)
新宿二丁目の事務所にあるだけタレント本が4000冊の本、ざっと本棚が10架以上あった。自分の自宅と実家にも本棚があり、そちらにも本がごっそりあるという。事務所にその他にCDだけの本棚が何棚かあった。
 水増し申告どころか本の数は想像を越えた。低学年の小学生の知能なら一生、この本棚の迷路に迷い込んだら出てこられずに餓死するかも。
 吉田氏は自慢するのでもなく、コレクターぶりをちょっとスカすでもなく。
 それにたくさん、集めればいいというものじゃない
 集めたものをどう、頭の中で整理整頓し編集し、解釈し、物にしているかだ。
 ここの作業がオリジナリティなんだと思う。
 本当のオタクって、自分なんか大したことないですよっていう照れがある。傍から見ると、充分条件満たしているに、世の中には自分よりもっとすげえ奴がいるかもしれないという、シンパシーと謙遜があり。
 美意識が強くないと本物のオタクにはなれない
 COOLな美意識を持ち合わせた男、キングオブオタクは吉田豪氏だ
 僕も敬愛する先達の書評家草森紳一さんや小津安二郎の研究家の田中真澄さんが本棚と本棚の間の本に埋もれて亡くなったという。それはそれで僕は美しい死に方(死に方に美しいなんてないか)である。
 おそらく、吉田豪氏も同じ道を歩むのか?
 いや、この人、自分で言っているがいたって、常識人だ。
 そんな死に方は吉田豪氏には似合わない。
http://bit.ly/5eXlgR
 ※写真は吉田氏の事務所で記念撮影する僕