やくみつるさんの言葉の深さと文学力

 極楽トンボの山本くんの事件。そこに僕は何人かの御なじみのテレビのコメンテーター達の奥行きの狭さ、洞察力の薄さを見た。
 その中で、今回、あまたのコメンテーターで、やくみつるさんの言葉だけが光り、「大人の意見」を聞いた。
 「山本のやったことをかばうわけじゃないけど、チームを解散したら、山本死ぬぞ!」と、いつも涼やかなやくさんが、声高に「ザ・ワイド」で言い切った。
 普段、ストレートで過激なコメントをするコメンテーターも今回だけは杓子定規なコメントに終始した。むしろ、この件にはみんな関わりたくないというのが本音のように見えた。その中で、やくさんの言葉はとても深かった。
 現在、山本くんは取調べ中だが もし、山本に対して、チームサイドが本当の意味で仲間意識があったなら、チームを解散するという結論は結局、チームとしての連帯責任を負う意味合いよりも、「全て山本のせいだ!」と、山本くんからの逃走にしか見えなかった。そして、山本は八方塞がりになり、チームという巨大なビルの崩壊をたった一人で受け止めなければいけないことになった。
 まずは山本くんの真相が究明されてから、 然るべき判断がなされるべきではなかったろうか。早急過ぎた気がする。
 漫画家は昔から、時代を見る視線があり、新聞の四コマ漫画など風刺絵として、活躍してきた。ナンシー関くんもそうであるが、絵師のコメント、文章力は時には活字で生きている評論家より、作家より、優れていることに「ハっと」させられる。やくさんの「ザ・ワイド」のコメントはいつも、言葉の選び方ひとつとっても「古風な文学の匂い」さえ感じる。
 今回、このニュースで、普段粋がっているコメンテーターの実体がリトマス試験紙のように反応して見えた。
 そして、やくさんの一言が僕に冷水を浴びせ、モノをこうやって見るものだと、気づかせてくれた。