立川志の吉「しめせ!」独演会 五月22日(水)〜ビジネス編〜(商売

立川談志師匠の功績のひとつに優秀な弟子を育てたことが上げられるが、立川談志弟子生産工場の最大の生産物が立川志の輔師匠であることは誰もが疑わないことである。その弟子生産工場は談志師匠が亡くなった後も工場長が立川志の輔師匠に代わり、生産活動が続いている。そして、今 期待される試作品が立川志の輔さんの弟子立川志の吉さんだ。
  立川志の吉「しめせ!」独演会 五月22日(水)〜ビジネス編〜(商売) 完売御礼!新宿明治安田生命ホールを見に行った。立川志の輔師匠のDNAを受け継ぐ?いや、正確には受け継ごうとしている逸材だ。このホールは僕が78年に法政大学落語研究会の仲間5人で落語会を開いた思い出の地。その時、円生師匠のカセットテープコピーと談志師匠と円楽師匠のネタも見て、参考にして、身の程知らずの鼠穴をやったホール。(同じ年の冬に、円生師匠の自宅に直談判し、九段会館で落語会の興行を開き、円生師匠に頼んで鼠穴をやっていただいた。)
 立川志の吉さんは火炎太鼓を一席、そして、お楽しみコーナー、さらに五人廻しをもう一席。
 お楽しみコーナーはスライドを使い、次にやる「五人廻し」という郭話の前フリとして、吉原とは何かを?今回の会がビジネス編ということもあり、吉原という所がどれだけ年間売り上げがあるか?を現在の相場に直して説明したり、吉原の俯瞰図を見ながら、吉原内の構造説明を詳細にしてくれた。東京ドームの1.6倍の大きさだったとか。
 お楽しみコーナーはまるで師匠立川志の輔さんの「ためしてガッテン!」(NHK)の手法であり、一席目の落語の出の時に一瞬、煙りが上がるのはやはり、これまた、師匠の「志の輔らくご in パルコ」の手法。
 まずは師匠に一歩でも二歩でも近づきたいという気持ちが舞台から伝わってくる。一生懸命、師匠の演出的足跡を自分なり、なぞる立川志の吉さん。これを単に「真似だ」などという代物ではない。例えは大仰だが、ビートルズでさえ、作曲をチャックベリーのロックンロールのコード進行をなぞったり、リードギターのジョージハリスンはチャックベリーのギターのリフをなぞった。
 どんな名人上手も最初は「なぞる」。「一流になぞることができる」ことが、本当の一流への第一歩である。一流になれない人達は「なぞり芸」が二流である。
  立川志の吉さんは師匠になんとか近づきたいと、必死に「なぞる」。弟子として、最大の師匠への敬意の念のアピールに他ならない。「立川志の輔師匠と舞台の手法が少し似ているじゃないか?」と、「なぞること」を否定するわかってないお客は、一切無視して突き進んで行って欲しい。芸は真似ることからの誰しもスタートだ。だって、ビートたけしさんが登場して、幾人の若手芸人がたけしさんの口調を真似たことか?しかし、最後にちゃんと、たけしさんの芸風の延長線上に自分の家を立てれてばいい。そうした芸人がちゃんと残っている。
※今回の〜ビジネス編〜でやったリポビタンDの小咄とかリポビタンDが誕生してからの値上がり率の低さを他の商品と比較するくだりとか、スポンサーに変に媚びない程合いのヨイショがとても上手で勉強になった このあたりの卒のなさが一番、立川志の輔さんの芸風の一部をうまい事、立川志の吉さんは切り取っていると思う