松任谷正隆のラジカントロプス2.0(ラジオ日本)「夜の旅人」全曲

歴史にif(もし)はないと言う。
 1977年に発売された松任谷正隆さんの最初で最後のソロアルバム「夜の旅人」(LP、CD化もされました)を聞く度に、このifを思うのだ
しかも、全作詞は松任谷由実さん。

 『偉大なる日本のシンガーソングライターの成功が同時代に誕生したはずの偉大なるシンガーソングライターを封印せざるおえなかった歴史の悪戯』


 極論を言うようだが、松任谷由実さんという日本の20世紀の奇跡的シンガーソングライターの驚異的成功をサポートするため、由実さんの目と鼻の先に存在する偉大なるシンガーソングライター松任谷正隆さんは自分のアルバムを創作することを封印せざるおえなかった。松任谷正隆さんは由実さんの音楽的パートナーであり、彼女の音楽プロデューサーであり、編曲家であり、コンサートの舞台プロデューサーである。
 日本の音楽史を揺るがすような松任谷由実さんのアルバム、コンサートを成功させるために心血を注ぎ、全ての時間をそのことに忙殺される歴史だったに違いない。
自ずと、作曲活動に専念する時間は奪われた。松任谷由実さんの大成功はこの松任谷正隆さんの時間喪失という代償があってこその成功であった。
 昨今のヒットチャートは、昔のバラエティで使い古されたアザトイ仕掛けで、ダッコちゃんやタマゴッチのような質の?目を背けたくなる曲が大手を振って闊歩している。青臭いことを言うようだが、果たして、マンモス級の売り上げを上げることが<音楽的正義>なのであろうか? 
 ところが、長年の間、同じマンモス級の売り上げを上げた松任谷由実さんのアルバムだけはきちんとしたコンセプトがあっても、アザトイ仕掛けもなく、<音楽的正義>=<音楽的クオリティ>を担保してきた。
 これは奇跡に等しいことである。
 この松任谷由実さんの<音楽的正義>=<音楽的クオリティ>を生命維持するために松任谷正隆さんには自分のアルバムなど作る時間がなかったのだ
  
 そこで、今回、松任谷正隆さんの1977年のソロアルバム「夜の旅人」を僕は音楽の文化人類学者のようになって36年ぶりに開封することを御願いした。
 このアルバム、一言で言えば、ポピュラー音楽のデパート。ロンドンにあるハロッズ、東京なら、日本橋三越本店という壮大な楽曲から数珠玉のポップスまで豪華品揃いの王道の音楽豪華百貨店である。 いわば、ポップスの教科書である。   
 どちらかと言うと、一般的な現在の松任谷さんのパブリックイメージはクールで自虐的なイメージである。恐らく、このアルバムを一聴すると、そのイメージは一掃される。それは27歳の感情豊かな青年の豊饒な音楽的感性の海である。生来の<照れ屋>なのか、悉く、感情を制御して来た松任谷正隆の生身の本当の音楽的な感性にふれてスリリングな思いをするはずだ
 棄て曲なし!
 最近、同じようなチマチマした曲がヒットチャートに登る中、ソロアルバム「夜の旅人」は音楽の日本遺産の宝の山。そんな曲など使わず、ここから、発掘し、現代に蘇生するといい曲ばかりである。
 曲は36年間、息をし、見事に生きていた
 3月25日(月)深夜25から26時!

を致します 関東近郊の方はhttp://radiko.jp/#
でパソコンのインターネットでリアルタイムで聞けます
 また3月27日からインターネット、podcast で曲は著作権の関係で流れませんが、トークはノーカットで配信されます
番組ホームページ  http://bit.ly/5eXlgR
松任谷正隆の「夜の旅人」
1. 沈黙の時間
2. 荒涼
3. 煙草を消して
4. 霜の降りた朝
5. もう二度と
6. 気づいたときは遅いもの
7. 乗り遅れた男
8. ホンコン・ナイト・サイト
9. 夜の旅人

 何しろ、スタジオのキャラメルママやティンパンアレーなどの演奏の気迫が違う。
 是非、1977年のソロアルバム「夜の旅人」の再販を希望すると共に、キャラメルママが再活動したことであるし、このアルバムの再現ライブも松任谷正隆さんには御願いしたい。
 もちろん、二枚目のソロアルバムを出して欲しいのは僕以外の松任谷正隆ファンなら言うまでもない