振り付け師に光を

 
 振り付け師という職業。
評価とか、収入に恵まれていない気がする。
今は格好付けて、日本でもコリオグラファーというらしいが、僕も愕然としているマイケルジャクソンの死。
 その一大ブームを作ったスリラーなど一連の振り付けのマイケル・ピータース。彼を亡くして、その成功はなかったのだと思う。
 「オール・ザット・ジャズ」のボブ・フォッシー、ウエストサイド物語のJerome Robbinsとずっと先達の振り付け師の人の仕事を見ると、映画監督なんかより、もっと選ばれた人しか出来ない天才的な人の仕事だと思う。なぜなら、ボブ・フォッシーもJerome Robbins、振り付け以外に自らの作品の監督演出をしているからだ。
 そして、最近見たDVDが『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』という作品。伝説のミュージカル「コーラスライン」16年ぶりの再演の8ヶ月におよぶ苛酷なオーディションを勝ち抜いていくダンサーたちの生の姿を追ったドキュメント。
 1975年7月25日に初演されたブロードウェイミュージカル。マイケル・ベネット原案、振付、演出。物語はマイケルベネットが実際にダンサー達に彼らの生い立ちを聞いた実話が元だ。実はその音源が残っていたのだ。彼が実際に車座になって、ダンサーの身の上話を一人一人、聞いて行くオープンリールの音源と、現在のオーデションのシーンがうまく編集してあるのだ。
 このミュージカル、79年に劇団四季が上演したのを見たがすばらしかった。
 また、僕がやっているお笑いライブ「新人コント大会」(渋谷ラママ)で新人のお笑い芸人が演じ、お客さんの10人の挙手があると、演技を中断されるショー的要素の強いオーデションコーナーがあるが、(以前、渡辺正行くんと僕で司会をしていた)、そのコーナーを始める時、「お笑いコーラスライン」という僕はタイトルを付けたものだった。
 さて、このDVDで一番感動したのが、オーデションを審査するスタッフがオーデションでありながら、時には感動して、惜しげもなく号泣しているのだ。
凄くいいことだと思ったし、僕もお笑いのオーデションでおもしろい時は素直に笑ってきたから、同じようなことをしているんだと感動した。
 したり顔で、審査員がオーデションする。
 こういうことって、昔から変だと思っていた。
 オーデションを受ける人の気持ちを考えたら、馬鹿な話だ。審査員の権威が、笑ったから、泣いたから、無くなることだとは僕は思わない。
 監督は、ミュージカル「ヘアスプレー」でトニー賞を受賞、ドキュメンタリーを含む3本の映画を監督し、ブロードウェイとハリウッド双方で活躍するジェイムズ・D・スターン。共同監督にアダム・デル・デオ。「ヘアースプレー」は見たことないが、このドキュメンタリーは素晴らしかった。
 それにしてもマーヴィンハムリッシュの音楽は素晴らしい。クインシージョーズの自伝に書いてあったが、彼は10代の頃からショービジネスで音楽の仕事をしていた天才少年だった。彼もインタビューを受けていて貴重な映像だ
※追伸 プロのヒップホップのダンサーより、学生のヒップホップのダンサーたちの方がうまいような気がしてならない。テレビとか見ると。もしかして、プロの振り付けをしている人がボビー・ブラウンの「Every Little Step」の頃に青春を迎えたかつてのボビ男くんで、そのダンスの影をひきずっているような気がする