イチロー選手の酒飲み取材

 イチロー選手に昨日、「神が降りて来て」、侍JAPANに優勝の二文字を引き寄せた。「自己鍛錬からの突然の結果」と言いそうなストイックなイチロー選手から、この言葉は意外だった。実は、僕が制作会社オフィストューワンに所属していた頃、そのイチロー選手が途中から所属していたことがあった。
 まったく、偶然だが、昨夜、そのオフィストューワンのプロデューサー滝川くんと飲んだ。彼は当時、まだ、イチロー選手がオリックス時代から大リーグに行く頃の3ヶ月密着取材した男。
飲むほどに、今度は僕から、イチロー選手を取材した滝川くんに逆取材である。
 イチロー選手は小学生の頃から、お父さんが硬球で練習させていたこと!
 イチロー選手が中学から高校に入学する時、将来、野球選手になるためにお父さんが野球の強い高校を選択した所、中学の校長先生が自宅に直々に来て「イチローくんは将来は東大に行かせたいのですから」と、その高校に行くのを止めに来たエピソード。イチロー選手はスポーツだけでなく、相当、勉強が出来たのだ。
 今になって見ると、年間20億稼ぐ男。
 東大進学より、プロ野球を選択したお父さんの目利きは当たっていた。いや、東大に行っても、イチロー選手は相当な成功者になったであろう。滝川くん曰く、とにかく、イチロー選手はそつない!そして、スタイリストである。しかし、カメラが廻っていない時のイチロー選手は実にいいヤツだそうだ。
 そのそつない男イチロー選手の昨日の試合後のインタビューはカメラは廻っているが、廻っていない時のイチローくんの素顔が覗かれたような気がする。
 僕みたいな凡人はこういう天才のほころびを見ると、ホッとし、断然、うれしくなり、応援したくなる。
 昨日も凄い歓声がドジャース球場をおおった。
 滝川くんも好きなイチロー選手のエピソード。
 それはイチロー選手の高校時代、ライバル高校の投手とバッターだったイチロー選手の変わらぬ友情話。イチロー選手は甲子園に行き、彼は行けなかった。彼は最終的に法政大学の投手になったが、肩を壊し、選手生命を絶たれた。それでも、友情は続き、そんな彼がイチロー選手の試合を見に行くと、終わるとすぐに毎回、メールで「ありがとう」とイチロー選手から届く。
 「滝川さん、イチローはどんな大歓声でもオレの声がわかるんですよ。聞き取れるんです」と彼が言ったので、一緒に超満員の球場に彼とイチロー選手の試合を滝川くんは見に行く。
 大歓声が上がる。その中で彼が、「イチロー!」声をかけた。バッターボックスに向かうイチローが、振り向いて、こちらを向いて、フっと笑ったという。