大谷崎

谷崎潤一郎三島由紀夫と共に尊敬する作家である。丸谷才一さんが「大谷崎というが、谷崎以外に作家で大をつけられる人はいない」という文章を読んだことがある。今回、雑誌「en-taxi」の座談会「「谷崎潤一郎「鍵」「瘋癲老人日記」をめぐる、 企まれた虚実の摩擦」 ゲスト=小林信彦宮本徳蔵 聞き手=坂本忠雄で知らなかった事実がわかっておもしろかった。「鍵」の映画化は若尾文子で行われたが、実は、この小説の中に書かれた爺の足フェチのシーンがある。谷崎自身も足フェチで御本人は淡路恵子に主演を希望していたという。確かに淡路恵子の足は欧米人並みの足であり、若尾ではない気がする。今から、40年以上前、谷崎はシンクロナイズドスイミングを見に行くほどであるから、相当の足好き。当時、シンクロナイズドスイミングを見に行くのも新しいが、小説の描写でアメリカンファーマーシーなどの描写もあり、谷崎はとにかく新しもの好きだったらしい。
 「細雪」という作品は戦中の連載を二度も、変態性欲という理由で中止にされ、実は検閲を恐れて、谷崎はおとなしくして執筆したこと。つまり、代表作の言われているが、谷崎にとって、この作品は不本意なものであったこと。
 そして、谷崎ファンだった三島は「谷崎の小説はいつも女が勝つ」と。これには目からウロコだ。
 
  また、この雑誌の「談春のセイシュン」第七回が圧巻だった。もちろん、立川談春さんのエッセイだが、今回のテーマは
誰も知らない小さんと談志である。談春志らくはその昔、立川ボーイズで売れ出したことがあった。しかし、息切れ。談春の方が兄弟子にあたる。しかし、ある日、その志らくから、談春は「兄さん、一緒に真打になりませんか?」と言われたことがあった。一緒に歩んできたが、談志の目に叶い、弟弟子の方が先に真打になることを言われたのだ。何もそんなことを言いに来なくていいのに、志らくのその一言に談春は感謝する。しかし、断り、司会をさせろという。その後、談春が真打になる日が来る。談志に先に認められなかった悔しさを談春は真打トライアルとして、月一回すごいゲストを呼び、落語会を開く。一回と最終回は談志、残り4回は小朝、志の輔、昇太、志らくが。これにもう一丁、それが昔、談志が絶好状態になった談志の師匠小さんを呼ぶこと。これに成功する。また、米朝の門外不出の除夜の雪をひざを突き合わせて、病気の米朝から習う。
この落語も引っさげて会をやる。
 噺家は真打の順番で香盤が変わる。談春の壮絶な真打への道が実に見事な筆力で描いている。感動の数ページ。