阿久悠

ムック本 文藝別冊 阿久悠を読了。
実はボクは阿久悠さんのいた事務所「オフィストゥーワン 」
に長年、放送作家としてお世話になった。
ボクより後に鳴り物入りでTBSを辞めて、入ってきた久米宏さんは現在も所属している。
当時、キャスターの安藤優子さんも所属していて、なぜか事務所の忘年会はタレントでもない作家のボク→久米宏安藤優子という夢のような?司会のバトンリレーで、所属スタッフいじり、所属タレントいじり、ビンゴ大会と進むのが通例だった。
 話は阿久さんの話から脱線したが。
一般的な阿久さんのイメージは苦虫を潰したような顔の作詞家ではないだろうか?ボクには「スター誕生」で見せたあの強面の印象がはまったくない。おだやかに事務所を徘徊し、社員に静かに声がけをする姿しか思い出せない。
「スター誕生」の阿久さんの強面は番組の性質上、今、考えると「強面」の審査員の芝居をしていたのだと推測される。笑点の出演者のキャラクターがそれぞれ、上手に配役されているように、「スタ誕」の審査員たちも、なだめ役とか、ベタほめする役とか、いろんな役を受け持っていたのだと思う。
 正直、テレビの世界に入る前の少年だったボクは「スタ誕」の阿久さんの寸評を見て なんて 偉そうな作詞家だろうと思っていた。素人のボクをまんまとダマした俳優阿久さんは大したものだ。
 さて、このムック本の冒頭のロングインタビューが村井邦彦さんなのだ。意外だと思う人も
多いのではないだろうか?
常識的にはピンクレディの阿久さんとのコンビ作曲家の都倉俊一さんが巻頭に出て来るところを
村井さんになぜ、お役がまわってきたのか?
 それは村井さんがザ・モップスの「朝まで待てない」という阿久さんの最初のヒットを飛ばしたコンビの重要人物だからだと思う。
 阿久&都倉のピンクレディの一連のヒット曲は、ボクにとっては企画性の強いノベルティ・ソングとして受け止めていた。今でも、中年女性たちがカラオケでピンクレディの振り付けを真似て歌う。女性にとって酒席で、大手を振って、余興でやれる初の国民的宴会芸の歌なのだと思う。そう、ここから、それまでいくら酔っても乱れることを許されなかった女性たちが酒席で男たちから自由を勝ち取っていくキッカケになった。
 決してボクは都倉&阿久のピンクレディコンビの歌を色物扱いして、軽んじているわけではない。
むしろ、都倉さんのピンクレディの歌の作曲法はプロ中のプロでなければ書けない楽曲である。ピンレディの楽曲にはところどころ、仕掛けがある。歌の中にびっくり箱が所々、あるわけだ。これはアマチュアには絶対書けない。ピンクレディのように、メロディが劇的に飛躍する流れを最初のAメロに戻すには、きちんとした音楽理論を理解していないと作れないものだ。ミュージカルのダンス音楽を書く技術に似ている。
 ピンクレディが大ヒットしている頃は、ボクはすでに青年で、リアルタイムで子供の頃、振りマネを夢中にし、ピンクレディのキャラクターグッズを買った子供達とは、ピンクレディの音楽が体に入っていく浸透圧が違うのだ。ボクはかなり、COOLに曲を聴いていたのだと思う。だから、「都倉さんのピンクレディ曲はいいなあ」ではなく「上手だなあ」と受け止めていた。もちろん、都倉さんのピンクレディ以外の多くの楽曲は「上手だなあ」ではなく「いいなあ」である。
 阿久さんの初の大ヒットを作った村井さんの曲「朝まで待てない」はじっと、聴いていたい歌であり、「歌いたい」歌だった。誤解を恐れずに言うと、阿久&都倉コンビのピンクレディの曲は対照的に「真似たい」歌の要素が強かったのだと思う。
 編集人がボクと同じことを考えて、都倉さんより先に村井さんのインタビューを
載せたかは知る由もない。
このムック本では、他にも、村井邦彦さんと交友関係もあるボクも初耳の話がいくつかあった。
当時、若造で「ドレミ商会」というレコード屋を経営していた村井さんは楽曲依頼された時、ブルーコメッツの「ブルーシャトー」を参考にしたというのだ。
 大学でジャズ研に所属していた村井さんによると、「ブルーシャトー」はジャズの形式を
持っている曲だと理解し、これなら自分にも作れると確信したそうだ。
一番、仰天した話が、当時、スパイダースのリーダーだった田辺さんに
村井さんはスパイダースに入ることを誘われたという事実があったことだった。
「村井先生、ボク、そんな話は一度も 聴いていませんよ!!!!?」
もし、入っていたら、スパイダースは、かまやつひろしさんと村井邦彦さんと、
まるで、ビートルズのジョン&ポールの強力な二人いるグループになっていたわけで、その運命はどうなっていたのだろうか?
ところで、ボクが隠れた阿久さんの名曲だと思っている歌がある。
それは、かまやつひろしさんの歌う「青春挽歌」である。
これは阿久さんの隠れた名曲と共に作曲家筒美京平さんの
隠れた名曲でもあるとボクは思っている
 古式豊かな言葉遣いで青春を描く阿久さんの叙情的な作詞、そして、楽器をやる人はわかると思うが、このようなメロディはギターだと浮かぶ可能性があるが、ピアノでこのような楽曲を作るのは不思議でならない。筒美さんの頭の中にある無数の音符の塊を一度、覗いてみたい。
 かまやつひろし「青春挽歌」。なつかしい日本の青春恋歌であり、カントリー出身の面目躍如のかまやつさんの名唱であります
https://www.youtube.com/watch?v=my0PcsWImwY
ドラマの関係者の皆さん、この楽曲を青春ドラマに使ってくれないでしょうか?マジで